ニホンミツバチ保護飼育 佐々木 伸一

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2021.08.05 キイロスズメバチ 001番

2021.08.05 キイロスズメバチ 001番

今回はキイロスズメバチです。

キイロスズメバチは日本の本州以南の殆どの地域で普通に見られるスズメバチです。

少し前までは独立した種として認識されてましたが、

キイロスズメバチはケブカスズメバチの亜種だという事がわかり区別されるようになりました。

ケブカスズメバチ(毛深雀蜂) Vespa simillima は北海道が原産のスズメバチで、

北海道、ロシア沿海州、サハリン、朝鮮半島、中国北部に分布しています。

ケブカスズメバチはキイロスズメバチに比し、個体サイズはやや小さい印象ですね。

キイロスズメバチ(黄色雀蜂) Vespa simillima xanthoptera はケブカスズメバチと棲み分けるように青森県より南に分布してるスズメバチです。

太古の昔に北海道から本州に渡ったケブカスズメバチが、より温暖な気候に適応しキイロスズメバチとなっていったものとの推測が容易です。

キイロスズメバチは、本州、四国、九州、及び周辺の島々にのみ分布しています。南限は屋久島までのようです。

この分布域をみると、ほぼ日本固有種のようにも見えますね。(台湾でもキイロスズメバチの発見報告があったとの資料もあります)

 

このキイロスズメバチですが、日本各地の地域によって様々な呼び名があります。

カメバチ(瓶のような巨大な巣をつくる事から)

アカバチ(飛んでる姿を下から見上げると赤く見えるから)

シシバチ(イノシシのように獰猛だから)

などなどを聞いた事があります。最後のシシバチはスズメバチ全般を指す場合の呼び名だったり、オオスズメバチを指す呼び名の地域もあるようです。

 

キイロスズメバチのサイズは日本国内のスズメバチの中では小さい部類で、

女王蜂で2.5〜3センチ、働き蜂だと2〜2.5センチくらいてす。

身体はそんなに大きくはないのですが、非常に短気で怒りやすい性格です。

日本各地で毎年発生する刺傷被害(蜂に刺される被害)で目立って多い印象を受けるのがキイロスズメバチによる被害です。

自分が以前、蜂駆除業を行っていた時の駆除依頼では、その大半がキイロスズメバチの駆除依頼だったと思います。

これは、キイロスズメバチのすぐに怒りやすい性格に加え、

他のスズメバチと違って人間の気配を余り気にせず、人間の生活圏内にも遠慮なしにどんどん巣をつくる習性が起因してると思います。

家屋の軒下、天井裏の中、床下、キッチンの排気ダクトの中、壁の中、庭木、電信柱の中など

本当にありとあらゆる所へ、僅かな隙を見逃さない感じですね。

この対応能力の高さが日本国内何処にでもいると感じる位の繁栄してる一因なのかも知れませんね。

巣は、春先に越冬女王蜂が閉鎖空間などの目立たない場所に単独でつくります。

そして営巣が上手くいき働き蜂の数が徐々に増える梅雨明け頃に、

今度は開放空間などに引っ越しして巣をつくる習性があります。(閉鎖空間でも巣の拡大が出来ると判断したら巣をつくります。天井裏の中などがそうです。)

何処にでも巣をかけてしまう生態故に、人間の生活圏内へも浸透し拡大し、結果トラブルの発生となり駆除の依頼となります。

 

キイロスズメバチは人間を獲物とはしないので、

そのトラブルはキイロスズメバチの防衛行動、反撃行動が理由となります。

防衛行動とは、主にキイロスズメバチが巣や仲間や自分を護る為の行動です。

巣には大切な女王蜂や沢山の幼虫、サナギなどが居て、これらは高タンパクの魅力的な資源で多くの外敵が狙う獲物でもあるのてす。

その防衛行動がキイロスズメバチの場合は苛烈となる場合が多いのです。

酷いときにはキイロスズメバチが集団で襲いかかってきたりします。

 

そんなキイロスズメバチが防衛、反撃行動するのには基準があります。

自分が駆除を実施する際に目安としていた判断基準では、キイロスズメバチの場合はゾーンディフェンスタイプです。

つまり、大切な自分達の巣を護る為に、巣の周りに見えない縄張り(ディフェンスゾーン)を勝手にキイロスズメバチが決めます。

その人間には見えない縄張りの境界線に人間が侵入するとキイロスズメバチは怒るのです。

そして、その縄張りは巣が大きく成長していくにつれ、キイロスズメバチが勝手に拡げていきます。

つい先日まで巣の近くを通っても大丈夫だったのに今日突然刺された、という被害の主な理由は上記の通りなのです。

更に、

一度何らかの刺激を受け巣のキイロスズメバチ達が怒りを溜めてしまうと、

その怒りをしばらく継続してしまいます。

その「怒りを溜めた状態」のキイロスズメバチの巣は、巣の縄張り(ディフェンスゾーン)を通常より明らかに拡大します。

そして、ほんの僅かな刺激で激怒し大規模な襲撃を行う可能性があります。

キイロスズメバチが「怒りを溜めている」状態の巣に近寄るのは本当に危険なので、間違っても近寄らないようにしましょう。

遠方から「怒りを溜めている」キイロスズメバチの巣を感知するのは難しいのですが、以下の6つの項に注意してみると気がつけるかもと思います。

① 巣の外壁に多量の働き蜂が居て巣の中へ入らないでいる様子

② 巣の付近の構造物、木の枝等にキイロスズメバチがズラリと沢山並んでとまっている様子

③ 静かに注視してるとピリピリした怒りの感覚がある

④ 鼻につくムッとするような攻撃フェロモンの匂いがする

⑤ 十分巣から遠いのに、キイロスズメバチの働き蜂がワザと目の前を飛んだり、耳の近くを飛行して羽音を聞かせて来たりする。(スズメバチ達は一般に目が良いので人間より先にコチラを発見してる場合が殆どで、人間の頭の高さ、手の届く範囲の距離を偶然に飛ぶ事はまず無いですので、ワザと姿を見せて威嚇してると判断すべきです)

⑥ 新しいキイロスズメバチの死骸が地面にいくつも落ちている。(キイロスズメバチの巣が何者かに襲撃された可能性があり、キイロスズメバチが生き残っていた場合恐ろしい反撃を集団て受ける可能性があるので、即、現場を離れるべきです) 

異変を感じたら、そのまま前に進まずに注意する事が被害を避けるコツかも知れません。

 

蜂駆除業をやっていると、悲惨な刺傷被害現場に呼ばれる事も多いので、

キイロスズメバチの獰猛さ、集団反撃による人間への襲撃のおそろしさを目の当たりにするのですが、

そんな危険なキイロスズメバチなのですが、

自然の豊かな日本の緑の植物達を守るのに大きく貢献している事実もあります。

仮に、

キイロスズメバチの新女王蜂が春先に出てきて巣づくりを開始し、

秋の9月に死ぬまでに1000個の働き蜂の卵を産むとします。

巣の規模や天候や獲物の動向などの自然環境に産卵数は大きく左右され、雄蜂や新女王蜂なども本来は産むのですが、今回は考慮外とします。

産卵した1000個の卵全てが働き蜂と仮定し、

その働き蜂が全て順調に育つとし、30日程働くとします。

30日のうち、20日を外勤し巣の外へ獲物を狩りに出るとします。

獲物を狩りに出たキイロスズメバチの働き蜂は、1日平均で5匹の獲物を狩るとします。

キイロスズメバチの主な獲物は昆虫で、バッタ、イモムシ、セミ、ハエ、等様々ですが、緑の植物を食い荒らす多くの草食昆虫がターゲットに含まれています。

そうしますと、

キイロスズメバチの巣が一年間で

1000匹×20日×5匹で『10万匹』もの草食昆虫を含む獲物を狩って、緑の植物の自然を護っているとも言えるのです。

有能な『緑豊かな自然環境の守護者』ではあるのですが、

人間に対する被害は黙認できるレベルではないので困ったものですね。

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