ニホンミツバチ保護飼育 佐々木 伸一

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2021.03.15 ニホンミツバチ 022番

2021.03.15 ニホンミツバチ 022番

ニホンミツバチ達のコミュニケーションについて

日本蜜蜂達の情報伝達手段として忘れてはならないのが「化学物質」による情報伝達です。
「化学物質」とは、ナサノフ線フェロモンや、体表(身体の表面)の炭化水素、毒針などからの分泌物などがあります。

音声や振動、電磁波(光など)とは違い、いったん分泌されると空間を漂い、比較的長い時間、多くの仲間に同時に情報を伝え続けるという特徴があるものもあります。
一般に警報フェロモンや誘引フェロモンなんかがこれにあたりますね。
これは情報伝達が一方通行なので、言語というには少し外れるように思えるかもですね。

体表の炭化水素は、アリなども仲間の識別に使っている事が知られています。
炭化水素というと身近なプロパンガスを連想しますね。 炭化水素は一般に炭素と水素の化合物の総称です。
昆虫(ニホンミツバチを含む)の場合、身体の表面のクチクラワックス(体表ワックス)と呼ばれる所で、主要成分は長鎖炭化水素類と言われています。

この体表の炭化水素は、感覚器(触角など)などでの接触によって情報を伝達します。
体表の炭化水素の組成は、有意に短時間で変更出来るもののようでは無く、「自分の情報を表明」する事に特化した、いわば「名札」のようなものと考えられます。

体表の炭化水素は一般に同種内の敵味方識別に利用されていて、アリの場合は同じ家族はどの働きアリも同じ体表の炭化水素の組成だと言われています。

なのですが、

ニホンミツバチの体表の炭化水素の組成は、同じ家族で同じ巣に住んでいる仲間の働き蜂でも違うらしいのです。

ニホンミツバチ家族内では、数種類から十数種類の体表の炭化水素組成の働き蜂が混在しています。

この事実は、もしかしたら女王蜂が複数の雄蜂と交尾してるので、娘である働き蜂の父親ごとに体表の炭化水素の組成が違ってきていると考えるのが妥当なのかもしれません。

なのですが、敵味方識別として体表の炭化水素組成が複数あるのは困った事で、敵味方識別の効率や精度の低下の要因と思えます。

もしかしたら、ニホンミツバチは同じニホンミツバチの別家族(別の群れ)との敵味方識別がそんなに重要ではない生態があるのかも知れません。
昨年、自分が保護飼育しているニホンミツバチの巣箱の群れに、何故かセイヨウミツバチの働き蜂が侵入していた事がありました。
最初発見した時はセイヨウミツバチがニホンミツバチ巣箱に侵入して盗蜜してると思い、
放置するとセイヨウミツバチが仲間を大量に呼んでニホンミツバチ巣箱の群れに襲いかかり殺されると判断し即セイヨウミツバチをやっつけたのですが、
驚いた事にニホンミツバチ巣箱から出てきたセイヨウミツバチ働き蜂をやっつけたら、巣箱のニホンミツバチ達が怒り始めたのです。
「え?、なんで?ニホンミツバチ達を助けてるのに、なんでニホンミツバチ達が怒るの?」と最初理解出来ませんでしたが、
しばらくその巣箱を観察し、更に内部の蜂球を観察撮影してセイヨウミツバチ働き蜂が十数匹以上ニホンミツバチの家族の一員として生活しているのを確認しました。
別の巣箱でも同様な事があり、
後日セイヨウミツバチ集団による襲撃回避で遠方に巣箱を移動させた為にその巣箱のニホンミツバチ群は逃去したのですが、
逃去の蜂球の中に十数匹以上のセイヨウミツバチ働き蜂も同行して蜂球に混ざってました。

この現象はニホンミツバチ達が寛容で、
普段は「襲撃者」である敵のセイヨウミツバチでも、
帰る場所が無く困ったセイヨウミツバチ働き蜂を受け入れてあげているのかも知れませんね。(単に敵味方識別が不十分なだけかも…)

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