ニホンミツバチ保護飼育 佐々木 伸一

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2021.02.05 ニホンミツバチ 018番

2021.02.05 ニホンミツバチ 018番

ハチミツとボツリヌス菌についての続きです。

ボツリヌス菌についてもう少し詳しく説明しますと、

ボツリヌス菌は
 好アルカリ性…(アルカリ性に強く酸性に弱い)
 嫌気性…(空気の無い状態を好む)
という特性を持っています。

ボツリヌス菌はいくつか種類がいて世界中の自然環境の土壌に広く普遍的に沢山分布し、
嫌気性なので主に土中、湖沼や湾の底の泥の中に多く存在しています。

嫌気性であるボツリヌス菌が地表に存在する場合の多くは、空気にふれる状態がボツリヌス菌の生存に適さないので「芽胞」の状態に変化しています。
ボツリヌス菌が自身が生存するのに適さない環境になんらかの理由で置かれてしまった場合、「芽胞」という環境変化に強い状態になるのです。
それは植物の「タネ」の状態に似ていて、芽胞はとても頑丈な休眠状態と言えます。

土壌に繁茂する植物から蜜や花粉を集め、給水の為に水辺にも降りるミツバチ達はボツリヌス菌を「芽胞」の状態で体に付着し巣に持ち帰ってしまう事が考えられるのです。
また、ボツリヌス菌は好アルカリ性を示します。

しかし、ハチミツはとても強い強いアルカリ性で強い殺菌作用を持っています。
いかにボツリヌス菌が好アルカリ性といえども、
ハチミツでは強アルカリ性が過ぎて生存出来ないのですが、
前述の「芽胞」の状態になれば休眠状態で一定期間は存在できてしまう様なのです。

しかし、このボツリヌス菌の「芽胞」はハチミツに限らず普段の食事や一般生活にて様々なパターンで割と人の口に入る事があるようなのです。
しかしそれによってボツリヌス菌の毒素の中毒被害が発生しないのは、
ボツリヌス菌が好アルカリ性なので逆の「酸」に弱いから人の胃の中の「胃酸」によって死滅するからです。
万が一胃の「胃酸」を潜り抜けても、人間の腸(特に大腸)の常在菌によりボツリヌス菌は容易に死滅させられてしまうようです。

ところが、生後間もない乳児は内臓機能がまだ完成しておらず、胃に「胃酸」が十分無かったり、腸内環境の常在菌が揃って居ない場合があるのです。
その場合、胞芽の状態でハチミツと共に摂取されたボツリヌス菌は胃酸の少ない胃を通り抜け、腸内フローラルの充分で無い腸に到達してしまいます。
そして腸内の空気の無い環境は「嫌気性」であるボツリヌス菌にとって都合がよく、胞芽状態から目覚めて活動を開始し毒素を生成してしまうのです。

胃に胃酸があれば、腸内フローラルが普通に機能すれば問題なく防げる事なのですが、
生後すぐの赤ちゃんには消化器官の機能が不十分なので母子手帳の「1歳未満の乳児にはハチミツを与えてはいけない」との注意書きは守る事が大事なのです。


少し話がズレますが、「メディハニー」という医薬品があります。
日本国内では未承認なので病院で使用されてはいないようですが、アメリカでは使用されているようです。
ハチミツを火傷、ケガ、皮膚病の「塗り薬」として使用する事は西洋でも東洋でも古くから記録があり、最も古い記録では古代シュメール人が使っていたとの資料もあります。
日本でも昔はヤケドや傷の治療にハチミツを塗っていたと年配の方から聞いた事があります。
MRSAなど薬剤耐性菌の死滅にとても効果があり、ヤケドや傷口への塗布はとても合理的で効果があるのですが、ハチミツに含まれる可能性のあるボツリヌス菌の胞芽の問題はどうなんだろうと疑問に思っていました。
全ての傷口ではないですが、火傷や外傷部位にハチミツを塗布しても、あくまで 外皮付近なのでそこから消化器官の大腸へボツリヌス菌が自力移動は考えにくく、開放された外皮でのボツリヌス菌の活動も考えにくいので安全性は担保されそうです。
ただ、万が一の真皮下への侵入と体内侵入によりボツリヌス菌の胞芽が活動開始して毒素の生成の可能性を考慮し、メディハニーの製品はガンマ線照射による殺菌滅菌を施した上で医療用として製品化されているようですね。

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