ニホンミツバチ保護飼育 佐々木 伸一

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2020.11.05 オオスズメバチ 002番

2020.11.05 オオスズメバチ 002番

画像はオオスズメバチが毒針をお尻から出してるものです。
2011年頃、まだオオスズメバチ対策のニホンミツバチ巣箱の試験や実験を繰り返していました頃、あるトップバー式のニホンミツバチ巣箱がオオスズメバチに集団で襲撃されました。
この巣箱は、まだオオスズメバチ対策構造はしておらず巣箱出入り口は市販のモノサシで狭めて高さ7ミリメートルとしていただけでした。
この巣箱は、Oさん宅脇の斜面の獣道に置いていたので、現場に上がらないと巣箱の様子が観察出来ずオオスズメバチ集団による襲撃の発見が遅れ、
Oさんから連絡をうけ現場に駆けつけた時には数匹のオオスズメバチ働き蜂が巣箱の出入口に取りついて邪魔なモノサシをガジガジ齧って巣箱内部への突入口を開こうとしていました。
付近には、確保した獲物の巣箱を守る為に数匹のオオスズメバチが威嚇するように旋回飛行してました。



大切なニホンミツバチ巣箱を襲撃された自分は

「うちの子になにするの!!」

と、戦闘モード全開

恥ずかしながら本当に「うちの子になにするの!」ってその時考えてました。

まずは邪魔な威嚇しながら旋回しているオオスズメバチ働き蜂を、前後方向の移動が無くなる瞬間(自分視点から見て左右移動のみとなり前後移動のベクトルが無くなる時)に狙い定めて虫取アミ(100円の虫取りアミを愛用してました)をふるい捕獲します。

飛翔する小さな虫を「点」で捕捉するのに、視力の弱い自分の弱点に鑑み(かんがみ)、
左右は楽に正確に把握できますが
前後の距離はセンチ単位での把握が充分でない事があり(瞬間的な判断は自分の感覚)、
旋回する相手にはこのポイントを狙うように、いつもやってました。


一匹捕獲すると即現場を退避し、斜面途中に用意してた蓋付きの容器にオオスズメバチを入れます。

そしてすぐ斜面を登って現場に戻り同じように捕獲します。

捕獲したら同じように斜面途中に戻り、用意していた容器にオオスズメバチを入れます。
容器は缶ジュースサイズのタッパーや白くまアイスの容器なんかを使っていたと思います。パチッと蓋をしめると充分に閉まってくれるので当時よく使ってました。

これを20回以上繰り返していた頃、

オオスズメバチ達が気付きはじめました。

トップバー巣箱のあるオオスズメバチ達の襲撃現場に、こちらの気配をころし接近する(自分の気を目だけに集中して頭や背中の気を極力留守にする)のですが、

20匹以上の仲間を失ったオオスズメバチが被害に気付き、現場の空気というか雰囲気がいっきに変わりました。

オオスズメバチは、ヒメスズメバチとほぼ同サイズの日本一巨大なスズメバチです。

しかし、その巨体であるがゆえに複雑な戦闘飛行は基本的にしません。
というか、できません。
巨体で、更にズングリと獰猛(どうもう)な体型をしていて重いので、
加速の後に複雑な機動をしようとすれば、羽のサイズが足りず空気の流れから剥がれて落下してしまうと自分は観察してました。
実際、自分の体験でもオオスズメバチが乱戦の中、咄嗟の回避等で飛行を乱されて墜落するのを目撃するのはよくありました。

より小型のキイロスズメバチは体重が軽く小型で空気比で墜落条件に余裕がある分アクロバティックな飛び方をする事もありますが、
スズメバチ達はアブやチョウなどの様に立体的な運動性よりも直線加速に体型的にも向いているようです。

ですから、特にオオスズメバチは普段の生活でゆっくり上昇や下降はできますが、
外敵や獲物に対して急降下や急上昇をしてくる事はほとんどありません。
なので、オオスズメバチ相手の立ち回りをしなければならない状況に出会った時、
上や下はあまり警戒する必要は無く、水平方向のみ警戒すれば大丈夫な場合がほとんどでした。
ただし、野生動物相手なので、「絶対大丈夫」は無いです。
どんな場合も全ての可能性に備えるのは被害無く続ける絶対条件だと自分は思ってました。

接近接的したり回避したりの高速での戦闘機動は苦手なはずのオオスズメバチ達

オオスズメバチ達が反撃体制に入ってからも「うちの子」を助ける為に撤退なんて考えてませんでした。
26匹めか、27匹めを捕らえて容器に居れてから現場に戻った時の事だったと思います。

ニホンミツバチのトップバー巣箱付近のオオスズメバチ達は概ね(おおむね)捕獲したかなと思い、
少し姿勢を高くして、現場を見下ろしているであろう「情報収集係」のオオスズメバチ働き蜂(自分はリーダーと呼んでいました)を、
どこの木の枝に居るだろうと探し視線を不用意に上に剥けてしまった時でした。


右前方の低い茂みから、高い怒りの羽音(スズメバチもニホンミツバチも羽音で様々な感情を表現します)とともに、一匹のオオスズメバチがこちらをロックオンして来ました。

音で即座に把握し初動にそんなに遅れをとらなかったのですが、そのオオスズメバチの飛行機動に驚きました。

その時初めて見たのですが

というかその後も見た事無いのですが

オオスズメバチがシザーズ運動しながら接敵してきたのです

シザーズ運動というのはカミナリのようなジグザグ飛行で、戦闘機なんかがやる奴です。
オオスズメバチなのに「頭をこちらに向け複眼単眼の視界内にこちらを捉えたまま」ジグザグ運動をしかけて来たのです。

咄嗟に(とっさに)、左手の虫取りアミを横凪ぎに払い(効果が無い払いなのは、わかって払いました)、
即座に後ろの確認もせずバックステップし冷や汗かきながら撤退しました。

「想定外」の恐ろしさを実感しました。


今から考えると、あの時のシザーズ運動仕掛けてきたのはオオスズメバチの働き蜂(メスで強力な毒針を持っている)ではなく、

オオスズメバチの雄蜂だったのかも知れません。
雄蜂は毒針が無いのですが、働き蜂のふりをして外敵に対し威嚇行動をとることがあります。

オオスズメバチのオス(雄蜂)とメス(働き蜂と女王蜂)の見た目の違いは、触覚の大きさ等なのですが、
咄嗟に見分ける事は出来なかったです。

その後、大量の働き蜂の被害を出したオオスズメバチ側は、そのニホンミツバチトップバー巣箱への襲撃はしばらくは控え、巣箱は無事その年の冬を越しました。

オオスズメバチは里山の昆虫界の生態系のトップに君臨する猛獣です。
基本的にどんな状況下にあっても、オオスズメバチを見かけたら接近してはいけません。
ましてや相手にしてはいけません。

オオスズメバチは空中を自由に飛ぶ生き物なので、どんなになれていても万が一、刺傷被害をうけたら大変な苦痛を味わう事となり亡くなられる方も出てきます。
オオスズメバチには絶対に近寄らないようにして下さい。


危険なオオスズメバチですが、多くの害虫を含む虫を獲物とし里山や山林の生態系のバランスをとっている益虫としての「本質」もあります。

各種スズメバチを生物農薬として農業に活かし、バッタやイモムシなどの極端な大量発生を抑えるものとして、
近い将来に毒針を無くして(DNA操作や変異にて毒針の無いスズメバチを研究すると面白いかもです。スズメバチは狩りに毒針を使わない場合が多いですから)運用される日が来ると有用かもしれませんね。

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