ニホンミツバチの保護飼育の実際の作業についてご説明します。
ニホンミツバチを巣箱に入れて飼育する事は、昭和の山陰の石見地方では少し山の方の集落へ行けば普通な光景だったようです。
ご年配の方に昔話をうかがうと、子供の頃実家の壁にミツバチの箱がぶら下がってた等々と聞くことができます。
第二次世界大戦後の日本全体が貧しい頃は、砂糖などの甘味料は貴重なのでハチミツは甘味として重宝されていたのでしょう。
時が流れて令和の現在、山間の集落でも家々の壁からニホンミツバチの巣箱はあまり見られなくなりました。
スズメバチ駆除の依頼をうけ山間部の集落のお宅へうかがう際、話を聞ける時は聞くようにしてました。
古いニホンミツバチ飼育の道具や巣箱を見せてもらうと、石見地方は何故か巣箱サイズが20センチ×20センチ程度で、全国で一般的な30センチ以上の巣箱(日本山海名産図会参照)は、ほぼみうけられませんでした。
日本全国で一般的な大きなサイズの巣箱でなく小さな巣箱での飼育の利点を見出していたようで、それが石見地方の先人の知恵の結果だったのでしょう。
そんな訳で昔実家でニホンミツバチ飼ってたからという年配の方がわりとおられる石見地方でニホンミツバチの保護飼育をはじめた自分には、それは良い背景でした。
なぜなら、ニホンミツバチの巣箱は何箱も同じ場所に集めて飼育は難しいので、
必然的に自宅以外に巣箱設置の場所を求めなければならなくて、
しかし公共の場所などに設置するわけにもいかず、一般の御宅に事情を説明して許可を得て、その御宅の裏などにニホンミツバチ巣箱を置かせていただいているからです。
「昔、実家でニホンミツバチ飼育してて馴染みがあるから、家のどこにでも置いていいよ」とおっしゃっていただけるお宅が実際に何軒もありました。
感謝しながら設置させていただき、その御礼に毎年収穫したハチミツを1ビンお渡ししており、お金のやりとりはありません。
ニホンミツバチ巣箱を設置させていただいてる御宅は多い時で50軒近くなり、
場所は近隣の市にも及び、一番遠くで100キロメートル以上の遠くの御宅に一年だけですが設置させていただいてた事もありました。
その場所は車で向かっても正直遠すぎて本当にしんどかったですね。
昔は、ニホンミツバチは飼育に全く手のかからない、箱や桶をひっくり返して放置しておけば秋になれば勝手に蜜が貯まっていて収穫できる感じでした。
ところが現在は、様々な知識と経験を元に手入れをし、
ダニやアリやカビやナメクジ、更にクマやテンなどの野生動物、
そして秋に集団で襲い来るオオスズメバチから護ってやらないと巣箱の中のニホンミツバチ群の存続は困難な様相となっています。
大気汚染や蓄積される農薬、殺虫剤、除草剤などの影響で、じわじわニホンミツバチ達の基礎体力というかバイタリティー(生命力)が削られていってるのかもしれません。
野生動物の世界は厳しい弱肉強食で冷酷なまでにパワーバランス(力関係)の世界です。
弱い者は容赦なくやられていきます。
ニホンミツバチは生態系の歯車の中で重要だから、大切な存在だから、と言っても特別扱いで生き延びさせてはもらえず消えていきます。
そうならないようニホンミツバチ達に繁栄してもらう為、
何軒もの御宅の脇や裏に設置させていただいてるニホンミツバチ保護飼育巣箱を住みやすいよう毎年改良を重ね、
襲い来る外敵で最も問題なオオスズメバチに対し、巣箱のニホンミツバチ達がパワーバランスで圧倒的優位になるような構造とし、巣箱の試作し実験を重ねました。
するとオオスズメバチ側は、そのニホンミツバチ巣箱に襲撃に行っても獲物は得られず、
逆に反撃で危険なめにあったり殺されるばかりとなると、最初から全く来なくなるのです。
ニホンミツバチ保護飼育巣箱を人様の御宅に設置させていただくにあたって、
特に年配の方の独り暮らしや小さなお子様のおられる御宅には安全の確保の為、オオスズメバチ対策巣箱の開発は絶対必要で、
最初の頃は貯金の減りの激しさも気にせず試作と改良を頑張ってやりました。
この対オオスズメバチ構造巣箱は、前述のようにパワーバランスが巣箱のニホンミツバチ側が圧倒的優位に立つ事で機能します。
つまり、
巣箱の中のニホンミツバチ群が弱ったり、混乱してたりすると十分に機能しません。
ので、
巣箱のニホンミツバチ達の健康状態の管理がとても大切になってきます。
ので、
とにかく巣箱の御世話に毎日走りまわりました。
巣箱は木製で中は見えないので、計量で重さを量り記録することで巣箱の中のニホンミツバチ群の発達繁栄状態が客観的に判断しやすくなります。
画像はその計量メモです。
保護飼育してるニホンミツバチ達の設置先の巣箱を車で巡り、
まず巣箱床面のゴミ、ダニ、アリ、カビなどの掃除をし、
必要と判断しましたら巣箱の土台ごと取り換えて加熱殺菌した清潔な土台床面にしてあげます。
この土台取り換え作業はかなりの手間ですが、
ニホンミツバチ働き蜂達の直近の脅威となる巣房の真下に潜むダニカビなどの難敵を除去し、
本来その対応にあたるはずの戦力(働き蜂)を他の仕事に振り分ける事ができるようになり、
ニホンミツバチ群の繁栄の助力にとても効果的でした。
計量と床掃除と土台取り換え、
他にも日除けやら防寒やら、風、地震対策、水害、ムカデ襲来やら、様々な雑用出来事が巣箱ごとにあり、
それぞれの成長が楽しみで頑張りがいがありました。
それでも上手くいかない巣箱もあり、小さな小さな赤いアリの襲来(普通に見ただけではわからない位小さかったです)や、
どうやって入ったのか巨大なスズメガ(?)が巣箱の中に入っていてリーダー働き蜂が助けを求めて私の腕にとまってきたりしたこともありました。
ニホンミツバチは知能が高く、人間程豊かではありませんが感情があります。
巣のニホンミツバチ群が衰え、もう盛り返していくのはあきらかに無理となった巣箱のニホンミツバチ達の悲しい表情見るのは本当に心に苦しくこたえます。
あの時、なんで気付かなかったんだろう、ああしていればこの群は繁栄続けてられたのかも、とか、
アカリンダニ被害と思われるニホンミツバチ巣箱の大量損失(2017年2018年頃)の時は、景色が何もかもが本当に灰色に見えてしまいました。大切にしてる奴らの死って本当に辛いものですね。
しかし、生き残っているニホンミツバチ巣箱達が居ます。
巣箱を設置させていただいてる御宅の方々もニホンミツバチを可愛がって大切にしてくれてます。
色々な困難ばかりですが、ニホンミツバチ達の為に微力ですが頑張り続け、
ニホンミツバチが絶滅危惧種になんかには絶対ならないよう(今の所なりませんが)ニホンミツバチ保護飼育の努力を続けたいと思ってます。
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